2024年4月5日日本農業新聞に「イノシシジビエ特産に黄信号 島根県美郷町」という見出しの記事が掲載されました。

美郷町の取り組みへの理解が不十分なまま標記記事が掲載され、これまで積み上げてきた当町に対する評価が損なわれる事態となっていますので、当町の見解を説明させていただきます。
美郷町は、獣害対策の先進地として、自治体や農業団体、地域グループ、企業、大学、研究機関など全国からたくさんの視察者が訪れる町であり、昨年度は89件約600人の視察受け入れを行いました。
美郷町の獣害対策は、「狩猟と駆除の明確な線引き」「(猟友会に頼らない)地域住民主体の駆除班編成」「駆除対象は(山に生息する個体ではなく)畑を荒らす加害個体」といった点が特徴として挙げられます。
以上のように、野生イノシシの捕獲は農作物の獣害対策を主な目的としており、ジビエ利用は獣害対策として捕獲したイノシシの利活用策の一つという位置付けであり、ジビエ振興ありきで闇雲にイノシシを乱獲しているわけではありません。
そして近年では、住民主体の獣害対策活動を起点に、「美郷バレー構想」の下、多様な知見を有する産官学民と連携して地域づくりや新規ビジネス開発に結びつけており、全国から一層注目を集めています。

【ご参考】<島根県美郷町公式note「豚熱…ピンチをチャンス、そして魅力に!」>
https://shimanemisato-town.note.jp/n/nb52512233673

取材記者には、こうした取り組みを理解した上で、読者に誤解を与えることのないよう十分注意して報道いただくよう、事前に何度も確認をした上で取材をお受けしています。しかしながら、掲載された記事は、あたかも「ジビエのために町を挙げて野生動物の捕獲を推進している」「町全体の捕獲頭数が激減したため産業が打撃を受けている」かのような前提で書かれており、極めて表層的で偏った内容のものでした。
特に、以下の点は読者に事実誤認をさせ、美郷町の評判を貶めるものとなっています。
1.駆除班員で猟師という方のコメントが引用されているが、駆除班員の立場での発言であれば(そもそも駆除が目的であり)意味不明。
2.「利用頭数8割減」「長崎からイノシシ肉を卸している」は、町全体の話ではなく一事業者のことであり、別の事業者からは(PCR検査など)適切な対応をとった上で、町内飲食店の新メニュー「猪鹿鳥定食」や学校給食への食材提供が行われている。また、地域グループによる皮革製品づくりの活動も従来と変わらず行われている。したがって、記事見出し「島根県美郷町は、・・・解決の糸口は見つかっていない。」という記事は事実誤認である。
3.掲載されている写真は、「豚熱感染予防のため適切な防疫措置→PCR検査→(陰性なら)食用として利活用」という一連の作業の中の一コマであるが、説明文には捕獲・防疫措置とだけ表記されており、あたかも陽性判明後の後処理であるかのような印象を読者に与えている。
実際、この記事を読まれた全国の読者や関係者からは、事実誤認を指摘する声や美郷町への悪影響を心配する声が多く寄せられています。所管する美郷バレー課においては事実関係の説明等の対応で通常業務に支障をきたす事態になりました。
4月20日付で「4月5日付けの見出し等の訂正」が掲載されましたが、傷ついた美郷町の評判を回復するには程遠いものでした。
日本農業新聞におかれましては、丁寧で誠実な取材活動を通して、事実に基づいた報道を行なっていただきますよう要望いたします。
また、当町の見解を広くイベントや視察等あらゆる機会に広く説明・周知し、新聞記事によって損なわれた信頼を回復に努めてまいります。